パックマン【徹底解剖!レトロゲーム大図鑑 Vol.5】

ビデオゲーム史に燦然と輝き続ける世界的大ヒットゲーム!

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※画像はNintendo Switch「NAMCOT COLLECTION」版です。
パックマン(Pac-Man)

・メーカー:ナムコ

・ジャンル:ドットイートゲーム

・プレイ人数:1~2人

・リリース日:1980年5月22日にアーケードで稼働

「パックマン」とは

1980年にナムコからアーケードゲームとしてリリースされた「パックマン」はカラフルなグラフィックとユニークで可愛いキャラクターがウケて、空前の大ブームを巻き起こした歴史的ヒット作品。プレイヤーは四方向レバーを使って迷路内の自機(パックマン)を操作し、追跡してくるモンスターを躱しながら配置された全てのクッキー(ドット)を食べ尽くせばラウンドクリアとなる。いわゆる「ドットイートゲーム」と呼ばれるアクションゲームのジャンルの一つ。操作がシンプルで分かり易く、しかし奥深いゲーム性は当時のゲーム市場の大半を占めていた成人男性客のみならず、女性や子供達をも魅了しゲームセンターを賑わせた。

社会現象となったスペースインベーダーの大ヒット以降、戦闘機や砲台を操作しエイリアンと戦う殺伐としたゲームが流行していたビデオゲーム黎明期において、「キャラクター性」をウリにしてビジネス展開を成功させた、まさに「革命的」な作品といえる。

操作方法

四方向レバー:パックマンを上下左右に動かす。

ゲームシステム

モンスター:それぞれが異なる行動パターンでパックマンの邪魔をしてくる今作の敵キャラ。ラウンド開始直後は「モンスターの巣」に待機しており、一定間隔で迷路内に飛び出してくる。モンスターに捕まると一発アウトで残数が1減る。

クッキーとパワークッキー:迷路内に配置された黄色いドット。これらを全て食べ尽くせばラウンドクリアとなる。黄色い大きなドットは「パワークッキー」で、これを食べる事でパックマンがパワーアップし、モンスターが「イジケ」状態になる。イジケ状態のモンスターは噛み付いて追い払う事が出来、一匹あたり200点が得られる。一個のパワークッキーで連続して噛み付く事で200~1600点(最大四匹)と得点が倍増する。

フルーツターゲット:1ラウンド中に2回、モンスターの巣の下に出現。食べるとボーナス得点が加算される。

ワープトンネル:画面の両サイトに配置された、反対側へ通り抜ける事が出来るトンネル。ここを通り抜ける時にパックマンの移動速度は落ちないがモンスターは遅くなる。ピンチの際モンスターを振り切るのに役立つ。

ゲームキャラの先駆!?「性格」を持ったモンスター達

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パックマンを面白くする為の重要なゲーム性の一つである、手に汗握る「追いかけっこ」を演じる四匹のカラフルなモンスター達。それぞれ異なる性格を持ち、パックマンの邪魔をする事を生きがいにしています。各モンスターの名前と性格は以下の通り。

名前(色)ニックネーム性格(行動パターン)
オイカケ(赤)アカベエパックマンの後を追いかける
マチブセ(ピンク)ピンキーパックマンの居る地点の少し前へ先回りする
キマグレ(青)アオスケパックマンの点対称の位置を目指す
オトボケ(オレンジ)グズタ何も考えず自由に動く

パックマンの生みの親として知られるゲームクリエイターの岩谷徹氏からの、「四方向から取り囲むように追いかけて欲しい」という要望に対し、担当プログラマーの舟木茂雄氏は「それぞれのモンスターに異なる行動パターンをプログラムする」という方法で応えました。この四匹のモンスター達に「個別」にプログラムされた行動パターンはゲーム内において各々の「性格」として表現される事となり、また各モンスターの個性を強調する(※そしてカラフルなビジュアルで女性人気も獲得する)狙いで四色のカラーに色分けされます。

これらの設定やゲームデザインはパックマンに、当時のビデオゲームにそれまで見られなかった「キャラクター性」をもたらし、後述のコーヒーブレイク(デモアニメーション)に繋がる、キャラクターの個性を活かした「ゲームの世界観」や奥深さ、キャラクターへの「愛着」を生み出しました。四匹のカラフルなモンスター達が所狭しと動き回る愉快で斬新なゲーム画面は、当時ビデオゲームに馴染みの薄かった女性の心を掴み、男性客中心だった当時のゲームセンターの雰囲気を一変させたのです。それはまさに時代を越えて愛される名作ゲーム「パックマン」と、「ゲームキャラクター」誕生の瞬間でした。

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開発秘話「赤一色になっていたかもしれないモンスター達」

モンスターの個性の象徴ともなっているカラフルなデザインですが、開発途中での試遊の段階ではナムコ創業者の中村雅哉氏の「分りづらいから赤一色に」との意見によって、一時は「赤一色」になってしまう可能性もありました。結局社内アンケートの結果、四色のカラフルなモンスターが採用されましたが、もしこの時赤一色になってしまっていれば、その後のパックマン人気や今に続くファッション、生活雑貨など「ホビー以外」にまで広がるキャラクター展開はなかったかもしれませんね。

パワークッキーで形勢逆転!高得点を狙え!

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やり込みゲーマーの腕の見せ所。一個のパワークッキーで四匹全て撃退すれば最高得点の1600点を獲得出来ます。

パックマンといえば「パワークッキーを食べて形勢逆転!」、逃げ続ける状況から一転しモンスターを追い払う事が出来、一気に高得点を稼ぐチャンスになります。このお馴染みのルールは米国の人気アニメ「ポパイ」に由来します。恋人のオリーブを巡って恋敵のブルートと喧嘩が絶えないポパイですが、乱暴なブルートに力負けしピンチに陥ると「ほうれん草の缶詰」を食べることによって超人パワーを生み出し、普段なら腕力で叶わない大男さえ打ち負かしてしまうのです。

この一度食べれば超人パワーが得られる「ほうれん草の缶詰」こそ、パックマンにおける「パワークッキー」です。パックマンも邪魔をするモンスター達から基本的には逃げる事しか出来ませんが、パワークッキーを食べた後しばらくの間だけは「イジケ」状態になったモンスターを追いかけ逆に噛み付いて巣へ追い払う事が出来ます。

ずっと追いかけられっぱなし、やられっぱなしでは楽しくありません。一発逆転のアイテムが存在する事によってそのアイテムを使うタイミングを考える「戦略性」や、敵を追いかけて倒す「爽快感」が生まれるのです。

M&A用語にまで!?「パックマンディフェンス」とは

敵対的な買収を仕掛けてきた企業に対して、買収を仕掛けられた企業が「逆に買収を仕掛ける」対応策の事を「パワークッキーを食べてモンスターに逆転攻勢を仕掛ける」パックマンになぞらえてパックマンディフェンスといいます。北米でのパックマンフィーバーの名残、そのゲーム性に対する抜群の認知度の高さが伺えます。

パックマンの世界観を広げた「コーヒーブレイク」