Evan’s Remains【ざっくりインディーゲームレビュー Vol.44】

Evan’s Remains エヴァンの残したもの【公式トレーラー】

観る者を引き込む、美しいピクセルアートの世界

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「Evan’s Remains エヴァンの残したもの」は2Dプラットフォームのパズルアクションゲームにノベルゲーム風のストーリーをミックスさせた「ミステリースリラー」です。プレイヤーは突然謎の失踪を遂げた天才少年「エヴァン」を追うため太平洋にある無人島に派遣された女性「ディシス」となって、島に点在する遺跡の仕掛け(パズル)を解きながら、遺跡に隠された秘密やエヴァン失踪の核心に迫ります。

島の遺跡内にはジャンプする度に出たり消えたりする足場やワープする足場があるので、それらを上手く調整して道を作り、画面右上のゴールから脱出・・・といった流れで遺跡(パズル)を2~3つほどクリアすると、次の遺跡までの合間にシナリオパートが挿入され少しずつ物語が進行していきます。パズルでのアクション操作は横移動とジャンプのみで、シビアなタイミングを要求するものでもないので誰でも気軽に遊べますし、制限時間もないのでゆっくり時間をかけて考える事も出来ます。何ならスキップしてストーリーだけ追う事も可能ですが、せっかくなので「次はどんな展開になるのかな・・・」と、続きが気になりつつもパズルが解けない「もどかしさ」にヤキモキして欲しいところです。

またこのゲームはグラフィックが素晴らしく、風で揺れる草木や小動物、浜辺に打ち寄せる波や水面に映る登場人物などの描写がとても緻密で、美しいピクセルアートの景色が次々と移り変わっていく様は、ゲームの核であるストーリー展開と同じくらい楽しめました。特にOP画面は爽やかで心地良いBGMと相まって何処か懐かしさを覚え、一枚の絵画を観ているような気持になります。

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パズルの難易度は全体的に低め。テンポ良くストーリーを追う事が出来ます。

結末に余韻と考察の余地を残す、メッセージ性の強いストーリー(※ネタバレなし)

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「浜辺に立つ女の子はディシスという名前で、彼女はエヴァンという少年を探している。」

ただそれだけしか知り得ず、多くの謎を一気に抱えた状態からゲーム本編はスタートします。

初めは美しい島の風景に興味を惹かれ、心地良いBGMに癒され・・・。そうして流れに任せてゲームを進めているうちに、散りばめられた伏線の様な物に勘付き・・・頭の中にぼんやりと物語の輪郭が浮かび・・・。情報が整理されていくにつれて「次の展開」、「疑問の答え」を求めどんどんストーリーに惹き込まれていきます。

何故エヴァンは失踪したのか。エヴァンとはそもそもどんな人物なのか。何故彼を探さないといけないのか。何故彼を探す役目を担わされたのがディシスだったのか。そもそもこの島は何処なのか・・・。始まりと同時に抱いたこれらの疑問が解けていくのは終盤以降。全てのピースが一つに繋がって、ディシスの旅と「一つの物語」は結末を迎えます。

所要時間は大体2~3時間ほど。率直な感想として、このゲームはあくまで「グラフィックとストーリーを楽しむもの」であると思いました。パズルについてはストーリーを彩るオマケ程度に考えれば、可もなく不可もなくと言ったところですが、その分奥深いストーリーと美しいグラフィックはまるで一本の映画作品の様で、短いながらも濃密なゲーム体験を与えてくれます。

特にストーリーに関してはゲーム開発者が「日本のノベルゲームの影響を受けている」とあって、メッセージ性が強く、エンディングの後もしばらく考えさせられる様な内容です。それゆえに受け手によって賛否両論、ゲームの評価は分かれるかと思いますが、グラフィックを観て少しでも気になった方には是非遊んで欲しいゲームです。

Evan's Remains

・ジャンル:パズル / プラットフォーム

・パブリッシャー:Whitethorn Digital / 開発:maitan69 (Matías Schmied)

・Steam版:2020年6月12日発売 / 720円

・Nintendo Switch版:2020年9月24日発売 / 699円

・Xbox One版:2020年6月11日発売 / 820円